SaaS Review Lab

電子契約SaaS

電子契約に取引先が対応してくれない時の3つの選択肢|紙併用ルールと「相手に負担をかけない」送り方

公開日: 最終更新日:
電子契約クラウドサイン取引先紙契約電子署名法

結論: 「相手に費用も登録も発生しない」ことを先に伝え、それでも無理なら紙と併用するルールを社内で決めておく

電子契約を入れたのに取引先が応じてくれない、という相談の大半は、相手が「自社もサービスに加入して費用を払う必要がある」と誤解しているか、社内の押印ルールが変えられないかのどちらかです。前者は説明で解決し、後者は「紙で締結する取引先を残す」運用ルールを持っていれば業務は止まりません。

この記事では、①取引先に負担をかけない送り方、②紙と併用する場合の社内ルール、③それでも断られた場合に電子契約を諦めるべきかの判断基準、の順で整理します。

なぜ取引先は応じてくれないのか

取引先が電子契約を断る理由は、大きく3つに分かれます。

  1. 費用と手間の誤解: 「自社も契約・登録しないといけないのでは」「システム利用料がかかるのでは」という誤解
  2. 社内の決裁ルール: 「契約書は代表印を押す」と社内規程で決まっていて、担当者の判断では変えられない
  3. 法的な不安: 「電子でも本当に有効なのか」「裁判で証拠になるのか」という不安

1は情報で、3は法律の説明で解決できます。2だけは相手の会社の問題なので、こちらが運用で吸収する必要があります。

選択肢①: 取引先に費用も登録も発生しない送り方を選ぶ

多くの電子契約サービスは、送信側だけが契約し、受信側はメールで届いたリンクから書類を確認して合意する方式を採っています。クラウドサインの場合、公開されている料金プランでは、Lightプランが月額11,000円(税抜)、送信件数ごとの費用が1件220円(税抜)と案内されており、費用は送信側にかかる構造です(出典: クラウドサイン 料金プラン)。

取引先に伝えるべきことは次の3点に絞ると誤解が解けやすくなります。

  • 「御社側の費用は発生しません(費用は当社負担です)」
  • 「御社側でアカウント登録やソフトのインストールは不要で、メールのリンクから内容を確認して合意ボタンを押すだけです」
  • 「締結後のPDFは御社にもメールで届き、保管は御社の任意の方法で構いません」

初回は、契約書本体を送る前に**「電子契約の流れ」を1枚にまとめた案内**を添えると、担当者が上司に説明しやすくなります。

選択肢②: 紙と併用する社内ルールを先に決める

取引先の押印ルールが変えられない場合、その取引先だけ紙で締結するのが現実的です。問題は「どの取引先が紙で、どこに原本があるか」が管理できなくなることなので、併用する前に次のルールを決めておきます。

項目ルール例
電子を原則とする範囲新規取引先・当社ひな形の契約はすべて電子で打診する
紙を認める条件取引先が書面で拒否した場合、または相手先ひな形で押印欄が必須の場合
紙契約の管理締結後にスキャンし、電子契約サービスの書類管理機能または共有フォルダに「紙原本あり」のタグで保管
原本の保管場所部署ごとに分けず、法務・総務の1か所に集約
見直し時期年1回、紙で締結した取引先に電子への切り替えを再打診

クラウドサインには送信していない書類をインポートして管理する機能が料金表に記載されており、紙で締結した契約も同じ場所で管理できます(出典: 同上)。紙と電子を別々に管理しないことが、併用運用を破綻させないポイントです。

選択肢③: 断られた取引先は「電子契約の対象外」と割り切る判断基準

すべての取引先を電子化しようとすると、担当者の説得コストが導入効果を上回ります。次の基準で線を引くと、社内で「なぜあの会社だけ紙なのか」という議論を減らせます。

  • 年間の契約件数が1〜2件の取引先: 説得コストのほうが高い。紙で構わない
  • 相手先ひな形での契約が多い取引先: 相手の書式に従う場面が多く、電子化の主導権がこちらにない
  • 契約件数が多い・更新が毎年ある取引先: ここは説得する価値がある。担当者ではなく、相手の法務・総務に直接説明の機会をもらう

法的な不安に答える: 電子署名法の位置づけ

「電子でも有効か」という不安には、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)を根拠に答えます。同法第3条は、本人による一定の電子署名が行われた電磁的記録について、真正に成立したものと推定する旨を定めています(出典: e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」)。事業者署名型(立会人型)サービスの法的評価については、総務省・法務省・経済産業省が2020年に見解を公表しており、各サービスの公式サイトでその見解に基づく説明が案内されています。取引先の法務担当には、サービス会社の公式説明ページをそのまま共有するのが最も手早い方法です。

なお、法令で書面が義務づけられている一部の契約類型は電子化できない場合があるため、対象の契約が該当しないかは事前に確認してください。

取引先への案内文のひな形

電子契約に切り替える際、取引先に送る案内文の型です。「費用も登録も不要」を最初に書き、手順を3ステップで示すと、断られる割合が下がります。

  • 件名:契約書の締結方法の変更について(電子契約への切り替えのご案内)
  • 本文1:平素よりお世話になっております。〇〇株式会社の△△です。
  • 本文2:このたび弊社では、契約書の締結を電子契約サービス(サービス名)に切り替えることといたしました。貴社側でのご費用・アカウント登録は不要で、メールで届くリンクから内容をご確認のうえ、画面上で同意いただくだけで締結が完了します。
  • 本文3:手順は次の3つです。①弊社から契約書のリンクをメールでお送りします ②リンクを開き、内容をご確認ください ③「同意して締結」を押していただくと完了です。締結後のPDFは双方に自動で送付されます。
  • 本文4:紙での締結をご希望の場合は、従来どおり対応いたしますので、その旨ご返信ください。
  • 本文5:ご不明な点がございましたら、担当△△(連絡先)までお問い合わせください。

「紙でも対応する」の一文を入れておくと、取引先は選択肢があると感じ、結果的に電子で応じる割合が上がります。

電子契約に切り替えた後の社内運用

取引先の同意が得られたあと、社内で決めておくべき運用は次の通りです。

項目決めること理由
送信権限誰が契約書を送信できるか(担当者・承認者)誤送信・権限のない締結を防ぐ
承認フロー送信前に上長が確認するか、金額で分けるか紙のときの押印申請と同じ統制を保つ
保管場所締結済みPDFをどこに保管するか(サービス内・自社ストレージの両方か)解約時にデータを持ち出せるように
紙との混在紙で締結した契約をどう台帳に載せるか検索・更新期限の管理を一元化
更新・解約期限の通知契約の更新日をリマインドする設定自動更新の見落としを防ぐ

電子契約サービスは締結を楽にしますが、契約管理そのものは社内のルールで決まります。ツールの導入と同時に、この表を埋めてください。

取引先のタイプ別: 断られる理由と対応

「応じてくれない」理由は取引先によって違い、対応も変わります。

取引先のタイプ断る理由有効な対応
社内規程で紙と押印が決まっている大企業規程の変更に承認が要る紙で対応し、先方の規程が変わるのを待つ。無理に押さない
電子契約に不慣れな個人事業主・小規模事業者操作が分からない、メールが不安電話で手順を案内する。画面のスクリーンショット付きの手順書を送る
電子署名の法的効力に不安がある「裁判で証拠になるのか」電子署名法の位置づけと、サービスのタイムスタンプ・証跡の仕組みを説明
自社で別の電子契約サービスを使っているどちらのサービスを使うかで揉める契約の主導側のサービスに合わせる。相手のサービスで締結しても問題ない
セキュリティ部門の審査が必要外部サービスの利用に社内審査があるサービスのセキュリティ認証(ISO27001など)の資料を提供する

断られた場合、「なぜか」を一度聞いておくと、次の取引先への案内で対策できます。多くは「知らない・不安」が理由で、費用や法的効力の説明で解消します。

紙と電子が混在する期間の管理

切り替えの途中は、紙の契約と電子の契約が混在します。この期間の管理を決めておかないと、契約書がどこにあるか分からなくなります。

  1. 1つの台帳に両方を載せる: 契約先・契約日・更新日・保管場所(電子契約サービス内/紙のキャビネット)を1枚の台帳に
  2. 紙の契約書はスキャンして電子契約サービスまたはストレージに保存する: 原本は保管し、検索は電子で行う
  3. 更新のタイミングで電子に切り替える: 既存の紙の契約は、更新時に「次回から電子で」と案内する
  4. 混在期間の目標を決める: 「1年後に新規契約の8割を電子に」など、数字で進捗を見る

混在期間を「一時的なもの」と割り切り、完全移行を目指さないことが、担当者の負担を減らします。紙が残る取引先は「電子契約の対象外」として台帳に明記すれば、管理上の問題はありません。

よくある質問

Q. 取引先が「電子契約は無料版のサービスでしか対応しない」と言います。 受信側は基本的に費用が発生しないため、無料版かどうかは受信側には関係ありません。「御社側の費用は0円です」と改めて伝えてください。

Q. 紙で締結した契約に印紙は必要ですか? 紙の契約書は印紙税の課税文書に該当する場合があります。電子契約は文書の作成に当たらないとして印紙税の対象外とされていますが、個別の判断は税理士または税務署にご確認ください。

Q. 取引先が電子契約に応じたあと、担当者が変わって紙に戻されました。 締結の方式を契約書本文または覚書に「本契約は電子契約サービスにより締結する」と明記しておくと、担当者交代時の揺り戻しを防ぎやすくなります。

Q. 相手が電子契約に応じた場合、印紙税はどうなりますか 印紙税は「課税文書の作成」に対して課され、電子データで締結した契約書は現行の取り扱いでは課税文書に該当しないとされています。紙で締結すれば印紙が必要になる契約(請負契約書など)は、電子にすることで印紙代が不要になる点が、取引先への説明材料にもなります。詳細は国税庁の案内や税理士に確認してください。

Q. 相手の会社の署名者が誰か分かりません。有効ですか 電子契約サービスは、送信先のメールアドレスと締結時のログ(日時・IPアドレスなど)を証跡として残します。相手の署名権限者のメールアドレスに送ること、必要に応じて社判・役職者名を文書内に記載してもらうことで、後の争いを避けやすくなります。

Q. 契約書の原本はどちらが持ちますか 電子契約では双方が同一の電子データを保持し、どちらが「原本」ということはありません。締結済みのPDFはサービス内と自社のストレージの両方に保存してください。

Q. 海外の取引先とも電子契約はできますか 多くのサービスは英語など多言語の画面に対応しており、海外の取引先とも締結できます。ただし、相手国の法制度で電子署名の扱いが異なる場合があるため、金額の大きい契約や紛争リスクのある契約は、事前に法務の専門家に確認してください。

Q. 取引先に電子契約を強制できますか 契約の締結方法は双方の合意で決まるため、一方的に強制はできません。継続取引の基本契約に「契約書は電子契約で締結する」旨を入れて合意しておけば、以後の個別契約は電子で進めやすくなります。

Q. 相手が電子契約サービスのメールを迷惑メールと誤解します 初回は、送信前に電話か普段のメールで「〇〇というサービスから契約書のリンクが届きます」と一報を入れてください。送信者名・件名・リンク先ドメインを伝えておくと、迷惑メールとして無視される割合が下がります。

関連記事

関連記事

【利益相反開示】本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。当編集部は独立した立場で製品を検証しており、掲載順位・評価は広告主の意向によって左右されません。詳細は編集方針をご確認ください。