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火災保険の水災補償は外していい?水災等地の調べ方と保険料の差

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火災保険を安くしたいときに、真っ先に候補に挙がるのが水災補償です。「うちは川から離れているから要らないのでは」と考える人は多く、実際に外す人は年々増えています。ただし2023年に水災の保険料の決まり方そのものが変わり、住んでいる市区町村によって水災の保険料に差がつく仕組みになりました。まずは自分の地域がどう評価されているかを確認してから判断したほうが、納得のいく選択ができます。

水災補償を外す人は、この12年で確実に増えている

損害保険料率算出機構が公表している「火災保険 水災補償付帯率」を見ると、傾向がはっきりわかります。付帯率とは、その年度末時点で有効な火災保険(住宅物件)の契約件数のうち、水災を補償している契約の割合です。

火災保険 水災補償付帯率(全国計)の推移
2013年度76.9%4件に3件以上が水災を付帯
2018年度69.1%5年で7.8ポイント低下
2021年度65.4%低下が続く
2024年度61.8%12年間で15.1ポイント低下

全国で見ると、火災保険のおよそ4割弱がすでに水災を補償していないという状態です。しかもこの数字は都道府県によって大きく違います。

都道府県別 水災補償付帯率(2024年度・上位下位それぞれ5件)
徳島県77.1%全国で最も高い
山口県76.5%付帯率が高い県
岡山県73.9%付帯率が高い県
高知県73.7%付帯率が高い県
佐賀県73.2%付帯率が高い県
大阪府57.9%付帯率が低い府県
東京都57.1%付帯率が低い府県
滋賀県55.8%付帯率が低い府県
茨城県55.2%付帯率が低い府県
奈良県54.0%全国で最も低い

もっと細かく見ると、同じ都道府県の中でも差が出ます。東京都の23区で比べると、江戸川区は73.1%、葛飾区は70.8%、足立区は68.7%と高い一方で、中央区は39.3%、千代田区は41.7%、港区は44.3%と半分以下です。低地が広がる区では水災を残し、都心部では外すという判断が、地域ごとにはっきり分かれていることが読み取れます。

2023年に、水災の保険料が「全国一律」ではなくなった

ここが今回の話の起点です。損害保険料率算出機構は2023年6月21日に金融庁長官へ火災保険参考純率の改定を届け出て、同月28日に適合性審査の結果通知を受領しました。この改定の柱は2つで、ひとつは住宅総合保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げること、もうひとつが水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化することでした。

それまで水災料率は全国一律でした。台風(風災)や雪災の料率は地域ごとに差が設けられていたのに、水災だけは地域ごとのデータが不十分だったため、どこに住んでいても同じだったのです。

機構は細分化の背景として、次の2点を挙げています。

  • 地域間の水災リスクの違いによる保険料負担の公平化を図る必要があること
  • ハザードマップなどのリスク情報が充実するにつれ、自分のリスクは低いと判断した人が保険料節減の目的で水災補償を外す傾向にあり、これが続くと水災料率のさらなる引き上げにつながり、水災補償をつけられない人が出てしまう可能性があること

先ほどの付帯率の低下は、まさにこの2点目そのものです。リスクが低いと考える人から抜けていくと、残った人の保険料が上がるという構造を止めるために、地域ごとに料率を分けたという流れになります。この検討は金融庁の「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」での議論も踏まえて行われました。

自分の地域の水災等地は無料で調べられる

細分化で導入されたのが水災等地です。建物の所在地における水災リスクの危険度を表した区分で、リスクが最も低い1等地から最も高い5等地まで5段階あります。区分の単位は市区町村別です。

そして、この等地は誰でも調べられます。損害保険料率算出機構が「水災等地検索」を公開しており、都道府県と市区町村を選んで検索するだけです。

  1. 損害保険料率算出機構のサイトで「水災等地検索」のページを開く
  2. 都道府県を選ぶ
  3. 市区町村を選ぶ(合併があった地域は「◯◯市(旧△△市)」の形で表示される)
  4. 検索を押すと、補償危険と等地が表示される

ここで表示されるのは同機構が算出した参考純率上の住宅物件における水災等地です。各保険会社の取り扱いは異なる場合があるため、実際の契約時には保険会社に確認する必要があります。なお現在公開されている等地は2023年6月21日届出に基づくもので、基礎データの更新状況に応じて見直されます。

等地によって保険料はどれくらい変わるのか

ここは数字の読み方に注意が必要です。「水災部分だけの比較」と「保険料全体での比較」で数字が違うためです。

水災等地による保険料差(損害保険料率算出機構の参考純率ベース)
水災部分のみで比較5等地は1等地の約1.5倍水災保険料だけを取り出した場合
保険料全体で比較最も高い地域は最も安い地域の約1.2倍火災・風災・雪災・水災等の補償合計
細分化しなかった場合との比較1等地は平均で約6%低い保険料全体ベース
細分化しなかった場合との比較5等地は平均で約9%高い保険料全体ベース

つまり、水災の料率そのものは等地で1.5倍ほど開きますが、火災保険の保険料は火災・風災・雪災なども含めた合計なので、全体で見た開きは約1.2倍にとどまります。機構は保険料が大幅に上昇しないよう激変緩和の措置も取っています。

そして重要な注意点として、これらはあくまで参考純率上の数字であり、実際に契約する保険会社の保険料の差とは異なります。参考純率は保険料のうち保険金の支払いに充てられる「純保険料率」の参考値にすぎず、経費などに充てられる「付加保険料率」は各保険会社が独自に算出しているためです。参考純率をそのまま使うか、修正して使うか、使わず独自に算出するかも保険会社ごとの判断になります。

自分の等地での実際の金額を知るには

水災等地はあくまで料率の目安で、実際にいくらになるかは保険会社ごとに変わります。水災あり・なしの両方で見積もりを取れば、自分の物件で差額がいくらなのかを金額で確認できます。

ハザードマップだけで判断すると4割強のリスクを見落とす

「洪水ハザードマップで浸水想定区域の外だから外す」という判断は、よく見かけますが不十分です。理由は、水災リスクが洪水だけではないからです。

火災保険でいう水災リスクは、次の3つなどをまとめたものです。

  • 外水氾濫…河川の水が堤防から溢れたり堤防が決壊したりして市街地が浸水すること
  • 内水氾濫…市街地に降った雨が排水施設の能力不足などで河川に排水できず浸水すること
  • 土砂災害…集中豪雨などによって発生するもの

国土交通省の水害統計(2011〜2020年の合計値)から作成された構成割合では、水害被害額のうち外水氾濫が56.2%、それ以外(内水氾濫や土砂災害など)が43.8%を占めています。洪水ハザードマップが主に示すのは外水氾濫であり、これだけで判断すると残り4割強のリスクが視野から抜け落ちます。

実際、機構も水災等地について「外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害等の水災リスクも含めて評価しているため、洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません」と明記しています。等地とハザードマップは別物として、両方見るのが正しい使い方です。

1等地でも、マンションの上階でもゼロにはならない

もう2つ、機構が明示している注意点があります。

ひとつは1等地は「リスクがない」という意味ではないことです。等地は自分の居住地の相対的な水災リスクレベルを表したものであり、機構は「どの等地でも水害は発生しています」と説明しています。

もうひとつは建物の高さだけで判断できないことです。機構は、マンションなど一定の高さがある建物であっても大雨などによる排水管の逆流による被害が実際に発生していること、河川から離れた地域でも土砂災害などの被害が発生していることを、水災補償を外すことのリスクとして挙げています。

外すかどうかを決める手順

ここまでを踏まえると、判断は次の順序で進めるのが合理的です。

  1. 水災等地を調べる…損害保険料率算出機構の水災等地検索で自分の市区町村の等地を確認する
  2. ハザードマップも別に見る…国土交通省のハザードマップポータルサイトで、洪水・内水・土砂災害それぞれを確認する(等地とは評価軸が違うため両方見る)
  3. 建物側の条件を確認する…戸建てか集合住宅か、何階か、地下室や半地下の車庫があるか、周囲より低い土地か
  4. 差額を金額で出す…水災あり・なしの両方で見積もりを取り、年間いくら違うのかを確認する
  5. 差額と損害額を比べる…床上浸水した場合の建物と家財の被害は大きな金額になりうる。年間の差額と、その被害を自己負担できるかを比べる

1等地で、集合住宅の中層以上で、周囲より高い土地にあり、地下設備がない。この条件がすべて揃うなら、外す判断にも一定の合理性があります。逆に4等地・5等地や、戸建て、低地、地下室がある場合は、保険料の差額よりも被害額のほうがはるかに大きくなる可能性を優先して考えるべきです。

見直すなら、水災だけを切り離して考えない

水災補償の有無は保険料を左右する要素のひとつですが、それだけを見るのは効率が良くありません。火災保険の見直しでは、あわせて次の点も同時に確認しておくと無駄がありません。

  • 建物の保険金額が実際の再調達価額と合っているか(過大なら払いすぎになる)
  • 家財の保険金額が実態と合っているか
  • 免責金額(自己負担額)をいくらに設定しているか
  • 地震保険を付帯するかどうか
  • 保険料の支払い方法(年払い・長期一括・クレジットカード払い)

特に建物の保険金額は、設定を誤ると保険料に直結します。水災を外して数千円を削るより、保険金額の見直しのほうが効果が大きいケースもあります。

よくある疑問

水災等地は今後変わりますか

変わる可能性があります。機構は水災等地について「基礎データの更新状況等を踏まえ、適宜見直しを行います」としています。現在公開されている等地は2023年6月21日届出に基づくものです。更新の際に自分の市区町村の等地が変われば、保険料にも影響します。

水災補償を外したあとで、また付けられますか

契約の更新時や条件変更の手続きで付け直せる場合がありますが、取り扱いは保険会社と商品によって異なります。また、災害が起きてから慌てて付けようとしても、その損害には間に合いません。外す場合は、次の更新まで外したままで問題ないかを考えて判断してください。

賃貸でも水災補償の話は関係ありますか

関係します。賃貸の場合、建物本体は貸主側が保険をかけていますが、入居者が加入する火災保険は家財と借家人賠償責任などが中心です。この家財の補償に水災が含まれるかどうかは商品によって異なります。賃貸の火災保険の選び方は「賃貸の火災保険は自分で選べる|更新時の断り方と節約額」で解説しています。

参考純率が13%上がったら、保険料も13%上がるのですか

そうとは限りません。参考純率は保険料のうち純保険料率の参考値であり、実際の保険料は各保険会社が付加保険料率も含めて決めています。改定率も地域・建物構造・水災等地によって大きく異なります。この仕組みは「火災保険はなぜ値上がりする?参考純率と改定率の実際」で詳しく整理しています。

まとめ

水災補償を外す人は増え続けており、2024年度の全国の付帯率は61.8%まで下がりました。ただし2023年の改定で水災料率が市区町村別の5区分に細分化されたため、判断の前提が変わっています。まずは損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で自分の地域の等地を確認し、洪水ハザードマップも別途あわせて見てください。水災リスクは外水氾濫だけでなく内水氾濫や土砂災害も含み、被害額の43.8%はその「洪水以外」が占めています。1等地でも水害は発生し、高さのある建物でも排水管の逆流による被害は起きています。そのうえで、水災あり・なし両方の見積もりを取って差額を金額で把握し、床上浸水したときの自己負担と比べて決めるのが、後悔の少ない進め方です。あわせて、値上げの仕組みそのものを理解しておくと更新時の判断が速くなります。「火災保険はなぜ値上がりする?参考純率と改定率の実際」もご覧ください。