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「DX担当者」に任命されたら最初に読む記事|何から手をつけるか

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DX担当者SaaS選定初心者向け

結論: 「比較」からではなく「棚卸し」から始める

中小企業で「DX担当」を任される方の多くは、専任の情報システム部門があるわけではなく、経理や総務の担当者が兼任するケースがほとんどです。いきなり製品比較サイトを検索して「どのSaaSがいいか」を探し始めたくなりますが、実はその前に今の業務の中で何にどれだけ時間がかかっているかを洗い出す作業が最も重要です。ここを飛ばして製品選定に入ると、機能は立派でも自社の業務フローに合わないSaaSを選んでしまい、結局定着しないという失敗につながります。

「DX担当者」という肩書きを与えられると、多くの人はまず「何かデジタルツールを導入しなければ」というプレッシャーを感じ、検索エンジンで「業務効率化 SaaS おすすめ」のような言葉で情報収集を始めてしまいます。しかし、比較サイトやランキング記事は一般的な評価軸でまとめられているため、自社特有の事情(業種特有の商習慣、拠点数、従業員のITリテラシー、既存システムとの兼ね合いなど)までは反映されていません。ランキング上位の製品を導入すること自体がゴールになってしまうと、本来解決したかった「時間がかかりすぎている業務」が置き去りになり、結果としてツールだけが増えて業務は変わらない、という状況に陥りがちです。

まずは肩の力を抜いて、「今の業務の中で、誰が・何に・どれくらいの時間を使っているか」を紙やスプレッドシートに書き出すところから始めてみてください。この棚卸し作業自体はツールを使わなくても、1〜2時間あれば着手できます。むしろ、最初に高価なツールを契約してから業務フローを合わせにいくよりも、先に業務の実態を把握してからツールを選ぶ方が、結果的に導入から定着までのスピードが速くなるケースがほとんどです。

棚卸しを行う際は、一人で抱え込まずに、できるだけ複数の担当者から話を聞くことも意識してみてください。同じ業務でも、担当者によって「面倒だと感じるポイント」が異なることは珍しくありません。ある担当者にとっては入力作業そのものが負担でも、別の担当者にとってはデータの二重チェックの方が負担に感じている、といった具合に、視点を変えることで見えてくる課題があります。DX担当者一人の視点だけで課題を決めつけず、複数の視点を集めることが、後々のツール選定の精度にも直結します。

DXが進まないよくある3つのつまずきポイント

1. 「とりあえず有名なツールを入れる」で終わってしまう

知名度や周囲の評判だけで選ぶと、自社の従業員数・業務フローに合わない機能過多のツールを契約してしまいがちです。無料トライアル期間中に実際の業務データで試すという一手間が、後々の運用コストを大きく左右します。

有名なツールほど機能が豊富で、営業資料やレビュー記事でも高評価が並んでいるため、「これを選んでおけば間違いないだろう」という安心感を持ちやすいのは自然なことです。しかし、機能が豊富であることと、自社の従業員数十名の組織にとって使いやすいことはイコールではありません。大企業向けに設計された高機能なツールを中小企業が導入すると、実際に使う機能はごく一部にとどまり、逆に画面の複雑さが操作の妨げになることも少なくありません。ツールを選ぶ際は「有名かどうか」ではなく「自社の規模・業務フローに対して過不足がないか」を基準にすることが重要です。

2. 現場の巻き込みが後回しになる

DX担当者だけで選定を進めてしまうと、実際に日々使う現場の従業員から「使いにくい」という声が上がり、定着しないまま契約だけが残るケースが多く見られます。選定の初期段階から実際の利用者にヒアリングすることが欠かせません。

これは特に、DX担当者自身が現場の実務を日常的に行っていない場合に起こりやすい問題です。管理側から見れば「効率化できるはず」に見える変更でも、現場の従業員にとっては使い慣れた手順を変えるコストの方が大きく感じられることがあります。選定の初期段階、できれば要件を固める前の段階で、実際にその業務を担当している数名にヒアリングを行い、「今の作業で一番面倒だと感じている部分はどこか」「新しいツールに求める最低条件は何か」を聞いておくと、契約後の反発を大きく減らせます。現場の声を反映したツール選びは、導入後の説明会や操作研修の受け入れられやすさにも直結します。

3. 比較の軸が定まっていない

「とりあえず3つくらい比較してみよう」と製品名だけを並べても、何を基準に選べばいいか分からなくなってしまいます。料金・連携範囲・サポート体制など、自社にとって譲れない軸を先に決めておくことが重要です。

比較の軸が定まっていないと、各製品の営業担当者やWebサイトが強調するポイントに引っ張られて、本来自社が重視すべきでない機能の充実度で製品を選んでしまうことがあります。例えば、自社にとって連携範囲の広さよりも操作のシンプルさの方が重要なのに、比較表の「連携先の数」という項目に目を奪われて、結果的に使いこなせない高機能な製品を選んでしまう、といった具合です。比較を始める前に、自社にとっての優先順位(例: 1位 操作のシンプルさ、2位 料金の分かりやすさ、3位 他システムとの連携)を3〜5個、順位付けして書き出しておくことをおすすめします。

これら3つのつまずきポイントには共通点があります。それは、いずれも「製品を選ぶ前の準備」を省略してしまっていることです。SaaS選定の失敗の多くは、製品そのものの良し悪しよりも、導入前の準備不足に原因があります。逆に言えば、この準備さえ丁寧に行えば、製品選びの精度は大きく上がります。準備にかける時間は、感覚的には「遠回り」に見えるかもしれませんが、契約後に「思っていたのと違った」と気づいて選定をやり直すコストと比べれば、はるかに小さな投資です。

最初の1週間でやるべきことチェックリスト

  • 現在の業務フローの中で、最も時間がかかっている作業を3つ書き出す
  • その作業に関わる担当者(現場)に、困りごとを直接ヒアリングする
  • 予算感(月額いくらまでなら決裁が通りそうか)を大まかに把握する
  • 既に使っている他のシステムとの連携が必要かどうかを確認する
  • 比較検討する製品を2〜3件に絞り、無料トライアルに申し込む

このチェックリストのポイントは、製品名を検索する前に上4つを済ませておくことです。業務の棚卸しと現場のヒアリングさえ終えていれば、比較検討の段階では「自社にとって何が重要か」を軸に製品を見比べられるようになり、機能一覧に惑わされにくくなります。

それぞれの項目についてもう少し補足すると、「最も時間がかかっている作業を3つ書き出す」段階では、感覚だけに頼らず、可能であれば1週間程度、実際にどの作業にどれくらいの時間を使っているかを簡単にメモしておくと、後から見返したときに説得力のある根拠になります。「予算感を大まかに把握する」段階では、決裁者(経営者や上長)に事前に「DXにどの程度の予算をかけられそうか」を一度確認しておくことで、後から製品を選んでから予算オーバーで振り出しに戻る、という手戻りを防げます。「既に使っている他のシステムとの連携が必要かどうか」は、意外と見落とされがちですが、既存のシステムとのデータ連携が取れないと、結局手作業でのデータ移行や二重入力が残ってしまい、DXの効果が半減してしまいます。

このチェックリストを1週間かけて丁寧に進めることに、遠回りに感じる方もいるかもしれません。しかし、ここで焦って製品選定に飛びついてしまうと、結局は契約後に「思っていた運用と違った」と気づいて選定をやり直すことになり、トータルではむしろ時間がかかってしまいます。1週間という期間はあくまで目安であり、業務内容が複雑な企業であれば2週間程度かけても構いません。大切なのは期間の長さよりも、現場の実態に即した情報を集めきってから次のステップに進むという順序を守ることです。

何から選べばいいか迷ったら

会計・経理領域からDXに着手する企業は多く、比較的最初の一歩として取り組みやすい領域です。公式情報をもとに整理した内容を会計ソフトの選び方完全ガイドにまとめています。すでに候補が2つに絞れている場合は、freee会計 vs マネーフォワード クラウド会計の比較記事、それぞれの詳細はfreee会計のレビューマネーフォワード クラウド会計のレビューで詳しく解説しています。

会計・経理領域が最初の一歩として取り組みやすい理由は、業務の範囲が比較的明確で、担当者も限られており、効果測定がしやすいからです。銀行連携による入力工数の削減、月次締めにかかる日数の短縮など、「導入前後でどれだけ変わったか」を数字で振り返りやすいのも、最初のDXテーマとして選ばれやすい理由の一つです。逆に、営業管理や顧客対応のように関わる部署・人数が多い業務からDXを始めると、関係者の合意形成に時間がかかり、最初の成功体験を得るまでに時間がかかってしまうことがあります。まずは会計・経理のように範囲を絞りやすい領域で小さな成功体験を積み、その進め方を他の業務領域にも展開していくというステップを踏むと、社内での「DXは進めやすいものだ」という空気づくりにもつながります。

もう一つ、会計・経理領域から着手することのメリットとして、経営層の理解を得やすいという点も挙げられます。経営層にとって「経理業務の効率化」は投資対効果をイメージしやすいテーマであり、予算の承認も比較的通りやすい傾向があります。最初のDXテーマで経営層の信頼を得ることができれば、次に営業支援ツールや顧客管理システムのような、より投資対効果が見えにくい領域のDXを提案する際にも、社内の合意形成がスムーズに進みやすくなります。DX担当者としてのキャリアを考える上でも、最初のプロジェクトで小さくても確実な成果を出しておくことは、その後の社内での発言力にもつながっていきます。

まとめ

DX担当者に任命されて何から手をつければいいか分からないときは、いきなり製品比較を始めるのではなく、まず自社の業務フローの棚卸しと現場のヒアリングから始めることが遠回りに見えて実は一番の近道です。土台が固まったら、当サイトのガイド・比較・レビュー記事を活用して具体的な製品選定に進んでください。

最後に強調しておきたいのは、DXは一度ツールを導入して終わりではなく、継続的に業務フローを見直していくプロセスだということです。最初の1本目のツール選定がうまくいけば、それが社内での成功体験となり、次の業務領域のDXにも取り組みやすくなります。逆に最初の選定でつまずいてしまうと、「DXはうまくいかないもの」という空気が社内に広がり、以降の取り組みが停滞しやすくなります。だからこそ、最初の一歩である今回のツール選定は、焦らず、棚卸しとヒアリングという地味な準備作業に時間をかける価値があります。

もし今、「何から手をつければいいか分からない」という状態で不安を感じているとしたら、それはDX担当者として特別に能力が足りないからではなく、多くの人が最初に通る道だと捉えてください。専任の情報システム部門を持たない中小企業では、DX担当者自身が手探りで進め方を学びながら取り組むケースがほとんどです。完璧な計画を立ててから動き出そうとするのではなく、まずは業務の棚卸しという小さな一歩から着手し、現場の声を聞きながら少しずつ精度を上げていく進め方の方が、結果的に定着するDXにつながりやすいといえます。焦らず、しかし着実に、今日紹介したチェックリストから始めてみてください。小さな一歩の積み重ねが、半年後、1年後には確かな成果として振り返れるはずです。

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