議事録・文字起こしSaaS
会議の録音・文字起こしの社内ルール雛形と設定対応表
結論: ツール導入前に「社内ルール」を先に文書化する
Nottaなどの文字起こしツールを会議に導入する際、多くの企業が機能や料金の比較から入りますが、後から問題になりやすいのは「誰の同意を得るか」「録音データをいつまで、誰と共有するか」といった運用ルールが決まっていないことです。ツールの設定はルールが固まった後に合わせる方がスムーズなため、まず社内ルールの雛形を作り、その上でツールの設定項目と対応づける順番をおすすめします。
なお、本記事は法的助言を目的とするものではありません。録音・個人情報の取り扱いに関する法的な判断が必要な場合は、個人情報保護委員会の公開資料を確認した上で、最終的な判断は弁護士・専門家に相談することをおすすめします。
録音データは個人情報に該当するのか
個人情報保護委員会が公開しているガイドラインQ&Aでは、通話・会話の録音データの扱いについて次のように整理されています。
- 「通話内容から特定の個人を識別することが可能な場合には個人情報に該当します」とされています(出典: 個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q1-10)
- 一方で、録音内容だけでは特定の個人を識別できない場合でも、「その他の情報と容易に照合でき、それによって特定の個人を識別することができれば、その情報とあわせて全体として個人情報に該当する」との整理も示されています(出典: 同Q1-11)
- 氏名を含む会話であっても、その氏名により検索できる状態に整理されていなければ、直ちに「個人情報データベース等」には該当しないともされています(出典: 同Q1-42)
つまり、会議の録音・文字起こしデータは、参加者が特定できる形で保存・共有される以上、多くの場面で個人情報として慎重に扱うべきデータに当たると考えられます。社内ルールを作る際は「これは個人情報だから慎重に扱う」という前提に立って設計することをおすすめします。
社内ルール雛形(条文形式)
以下は、会議の録音・文字起こし運用に関する社内ルールの雛形です。自社の組織体制や利用ツールに合わせて、括弧内の具体的な運用方法を確定させた上でご利用ください。
第1条(目的) 本ルールは、社内会議・商談における録音および文字起こしデータの取り扱いに関する基準を定め、参加者のプライバシーに配慮した適切な運用を図ることを目的とする。
第2条(同意の取得) 会議を録音する場合、主催者は会議の冒頭で録音する旨を口頭またはチャットで参加者全員に告知し、同意を得るものとする。社外の参加者が含まれる会議では、事前の招待メール等で録音する旨を明記し、開始前に異議がないことを確認する。
第3条(録音の告知方法) 録音・文字起こしツールを起動する際は、ツール側の通知機能(参加者への表示・Bot参加の告知等)を有効にし、参加者が録音の有無を認識できる状態を維持する。
第4条(保存期間) 録音・文字起こしデータの保存期間は原則として(例: 議事録確定後6か月間)とし、期間経過後は担当者が定期的に削除する。契約・法務に関わる重要な会議は、別途定める長期保存対象に含める。
第5条(共有範囲) 録音・文字起こしデータの共有範囲は、会議参加者および業務上必要なメンバーに限定する。ワークスペース内の全体共有設定を利用する場合は、共有範囲を事前に確認した上で有効化する。
第6条(社外会議の扱い) 取引先・顧客が参加する社外会議を録音する場合、事前に相手方の同意を得るものとし、相手方が録音を望まない場合は録音を行わない。文字起こしデータを社外へ共有する際は、共有前に社内の確認プロセスを経る。
第7条(退職者データの扱い) 退職者が参加していた会議の録音・文字起こしデータは、退職後も第4条の保存期間に従って管理し、アクセス権限は退職と同時に削除する。データそのものの要否は、業務引き継ぎの完了後に見直す。
第8条(改廃) 本ルールの改廃は、利用ツールの変更や運用実態の変化に応じて随時見直すものとする。
条文とツール設定の対応表
条文で定めたルールは、実際には文字起こしツール側の設定項目と対応づけて運用する必要があります。Nottaを例に、公式ヘルプセンターで案内されている設定項目との対応関係を整理します。
| 条文 | 運用ルールの内容 | 対応するツール設定の例 |
|---|---|---|
| 第2条(同意の取得) | 会議冒頭での告知・事前同意の確認 | 会議参加時の録音通知表示(ツール依存のため利用前に確認) |
| 第3条(録音の告知) | Bot参加・録音中の表示を維持する | Zoom・Teams連携時のBot表示設定 |
| 第4条(保存期間) | 保存期間経過後の削除運用 | ノート・フォルダ単位でのアクセス権・保存期間の管理(出典: Nottaヘルプセンター「文字起こしデータにアクセス権を設定する」) |
| 第5条(共有範囲) | 会議参加者・必要なメンバーのみへの共有 | 対象メンバー・グループを選択して権限を付与する共有設定(出典: Nottaヘルプセンター「共有とアクセス権限設定」) |
| 第5条(共有範囲・全体共有) | ワークスペース全体への共有の要否確認 | ワークスペース単位の内部共有設定(出典: Nottaヘルプセンター「ワークスペース単位の内部共有設定」) |
| 第7条(退職者データ) | 退職時のアクセス権限削除 | ユーザーロール・権限の変更・削除(出典: Nottaヘルプセンター「ユーザーロールと権限」) |
条文と設定を対応づける際は、ツールの管理画面のスクリーンショットを添えた運用マニュアルを別途作成し、社内ルールの条文だけでは伝わりにくい「実際の操作手順」を補足しておくと、担当者が変わっても運用が引き継ぎやすくなります。
導入時に見落としやすいポイント
- 社外会議のBot参加: 取引先の会議に文字起こしBotを参加させる場合、事前告知なしに参加させるとトラブルの原因になります。社外向けの招待文には、録音・文字起こしツールを利用する旨を明記するテンプレートを用意しておくと運用が安定します。
- 無料プランでの利用範囲: 無料プランでは共有範囲やアクセス権限の設定項目が限定されている場合があります。社内ルールで定めた共有範囲を実現できるプランかどうかは、契約前に公式サイトで確認してください。
- 法務・人事関連の会議: 契約交渉や人事評価に関わる会議は、通常の会議より厳格な保存期間・共有範囲を定める必要があります。第4条の保存期間は、会議の性質に応じて複数パターンを用意しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 録音の同意は口頭だけで十分ですか
社内会議であれば口頭での告知とチャットでの記録を組み合わせる運用が一般的とされていますが、社外の取引先が参加する会議では、後から「同意していない」という認識のずれが起きないよう、事前のメールなど記録に残る形で告知しておくことをおすすめします。法的に必要な同意の取得方法については、個々の状況によって判断が異なるため、専門家に確認することをおすすめします。
Q. 保存期間はどれくらいに設定すればよいですか
一般的な社内会議であれば議事録確定後の一定期間で削除する運用が多く見られますが、契約書の作成根拠となる商談や、法務・労務トラブルに関わる可能性がある会議は、より長期の保存が必要になる場合があります。業種・会議の性質によって適切な期間は異なるため、社内の法務担当者や顧問弁護士と相談の上で条文の期間を確定させることをおすすめします。
Q. 退職者が参加していた過去の会議データはどう扱えばよいですか
アクセス権限は退職と同時に削除し、データそのものを残すかどうかは業務引き継ぎの完了状況を踏まえて判断する運用が現実的です。個人情報保護の観点では、利用目的を達成したデータを漫然と保存し続けないことが望ましいとされているため、定期的な棚卸しのタイミングで削除対象を見直すルールにしておくと安心です。
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