SaaS Review Lab

バックオフィスSaaS

中小企業のSaaS解約忘れを防ぐ管理台帳の作り方|スプレッドシートの列構成と月次チェック手順

公開日: 最終更新日:
SaaS管理解約コスト削減スプレッドシートバックオフィス

結論: 台帳に必要な列は8つ。「解約期限」と「担当者」の2列が無いと台帳は機能しない

SaaSの解約忘れは、ツールを入れた人と請求書を処理する人が別で、「いつまでに誰が解約を判断するか」が決まっていないことで起きます。防ぐには高機能なツールより、次の8列を持つ台帳と、月1回30分のチェックで十分なケースがほとんどです。

列内容なぜ必要か
サービス名例: Notta、クラウドサイン—
利用部署・担当者継続可否を判断できる人「誰も判断しない」を防ぐ
契約形態月額/年額/従量年額は解約タイミングを逃すと1年分の損失
月額換算年額なら÷12部署間で比較できる単位に揃える
契約開始日・次回更新日契約書・管理画面から転記自動更新の起点
自動更新の有無と解約期限例: 更新日の30日前まで最重要列。 期限を過ぎると解約できない
利用人数(アカウント数)実際にログインしている人数「契約10名・利用2名」を可視化
直近の利用確認日・判断継続/縮小/解約判断の履歴を残す

以下、解約忘れが起きる構造、台帳の運用手順、専用ツールへ移る目安の順に整理します。

解約忘れが起きる3つの構造

  1. 申込者と支払者が違う: 現場が試しに契約し、請求だけ経理に回る。経理は「使っているか」を判断できない
  2. 年額・自動更新の期限を把握していない: 多くのSaaSは「更新日の○日前までに申し出がなければ自動更新」の条項を持つ。更新日を知らなければ期限も分からない
  3. 人数課金の縮小をしない: 退職・異動でアカウントが空いても、契約人数を減らす手続きをしていない

3つとも「情報が1か所に無い」ことが原因です。台帳はその1か所を作る作業です。

台帳の作り方: 最初の1時間でやること

  1. 請求元を洗い出す: クレジットカード明細・銀行引き落とし・請求書の3つから、過去3か月のSaaS課金をすべて拾う。会計ソフトを使っていれば、勘定科目「通信費」「支払手数料」等の摘要で絞り込めます
  2. 各サービスの管理画面で契約情報を確認する: 契約形態、次回更新日、契約アカウント数を転記。自動更新の条項は利用規約か契約確認メールに書かれています
  3. 担当者を1人決める: 部署ではなく個人名。異動時は引き継ぎ項目に入れる
  4. 解約期限を計算して入力する: 「更新日 − 事前通知日数」。この列にだけ条件付き書式(30日以内で黄色、7日以内で赤)を設定する

スプレッドシートは Google スプレッドシート・Excel のどちらでも構いません。共有フォルダに置き、経理と各担当者の両方が編集できる状態にします。

月次チェックの手順(30分)

毎月の締め作業に次の手順を組み込みます。

  1. 解約期限が60日以内の行を抽出する(フィルタで並べ替え)
  2. 担当者に「継続/縮小/解約」を確認する。返答が無い場合は「解約候補」として経理から再確認する
  3. 利用人数を管理画面で確認し、契約人数と差があれば縮小手続きをする
  4. 判断と日付を台帳に記録する

年1回は、台帳の合計(月額換算)を前年と比較します。SaaSは1つずつは小さくても、合計すると人件費に近い額になっていることがあります。

専用のSaaS管理ツールに移る目安

台帳で回らなくなる目安は、サービス数が30を超えるか、部署ごとに勝手に契約するケースが月1回以上あるかのどちらかです。この段階では、SaaS管理専用のツールで、利用状況の自動取得やアカウントの棚卸しをする方が手間が減ります。たとえばマネーフォワードは、SaaSの利用状況とコストを一元管理するサービス「マネーフォワード Admina」を提供しています(出典: マネーフォワード Admina 公式)。機能・料金は変更されることがあるため、導入前に公式サイトで最新情報を確認してください。

会計ソフト側でSaaS費用を科目・摘要で追えるようにしておくと、台帳と会計データの突き合わせが楽になります。会計ソフトの選び方は「マネーフォワード クラウド会計の料金・機能」も参照してください。

導入時に見落としやすいポイント

  • 無料トライアルの終了日も台帳に入れる: トライアルから自動で有料化するサービスは、解約期限=トライアル終了日です
  • 個人のカードで払っているSaaSを拾う: 経費精算に混ざっている課金は請求元の洗い出しから漏れやすい項目です
  • 解約の手続き方法を控えておく: 「管理画面から」「メールで申請」「電話のみ」とサービスで異なり、電話のみの場合は期限直前だと間に合わないことがあります

台帳のサンプル(8列)

実際に埋める前提で、8列の台帳のサンプルを示します。スプレッドシートに同じ列を作れば、そのまま使えます。

サービス名用途・利用部署月額(税込)契約日更新日/解約期限支払い方法担当者ステータス
会計ソフト経理3,980円2025/04/012026/04/01/2026/03/01まで法人カードA経理・山田継続
チャットツール全社1人850円×122024/10/15毎月自動更新/解約は前月末法人カードA総務・佐藤継続
デザインツール広報1,500円2025/01/102026/01/10/2025/12/10まで個人カード立替広報・鈴木要確認(利用者退職)

「解約期限」は更新日ではなく「解約を申し出る期限」を書きます。年額契約は更新日の1か月前が期限のことが多く、この列が空だと台帳の意味がありません。「ステータス」に「要確認」が付いたものを月次チェックで処理します。

台帳が形骸化する原因と対策

作った台帳が半年で更新されなくなるのは、次の3つが原因です。

  • 更新の担当と頻度が決まっていない → 月次の経理締めの作業に「台帳の更新」を組み込み、締め担当が確認する
  • 新規契約が台帳を経由しない → 「SaaSの新規契約は台帳に登録してから申請する」ルールにし、申請フォームに台帳の行番号を書く欄を作る
  • 個人カードの立替払いが台帳に載らない → 立替精算の際に「サブスクは台帳登録が条件」とし、経費精算の承認時に確認する

台帳を「作る」より「月次の締めに組み込む」ほうが、続く仕組みになります。

解約手続きそのものを楽にする準備

台帳で「解約する」と決めても、解約の手続きで止まることがあります。台帳に次の2列を足しておくと、解約が担当者の作業10分で終わります。

  • 解約方法: 「管理画面のプラン→解約」「メールで解約依頼」「電話のみ」など、実際の手順。初回契約時に確認して書いておく
  • 解約時に必要な情報: 契約番号・登録メールアドレス・管理者アカウント。担当者が退職していると分からなくなる情報

年額契約は「解約期限を過ぎると1年分が自動請求される」ため、期限の1か月前に台帳のステータスを「要判断」に変え、責任者が継続か解約かを決める運用にします。

使用状況を確認する方法(解約判断の材料)

「使っているかどうか」を感覚で判断すると、必要なツールを切ったり、不要なツールを残したりします。次の方法で使用状況を数字にします。

方法分かること手間
管理画面の利用状況レポート最終ログイン日・アクティブユーザー数(多くのSaaSに機能がある)5分
ユーザー数と実際の利用者の突き合わせ退職者・異動者のアカウントが残っていないか10分
担当者へのアンケート(3問)「先月使ったか」「代替手段はあるか」「なくなったら困るか」全社で30分
請求額の推移ユーザー数の増減に請求が追随しているか5分

「最終ログインが3か月以上前」「利用者が1人」「代替手段がある」の3つがそろったツールは、解約の候補です。逆に、利用者が少なくても「なくなったら業務が止まる」ツールは、ユーザー数を減らして継続します。

解約以外の削減手段

解約しなくても、次の見直しで費用は下がります。

  • ユーザー数の削減: 退職者・利用のないアカウントを削除。多くのSaaSは月額がユーザー数で決まる
  • プランのダウングレード: 使っていない上位機能があれば、下位プランへ
  • 年額への切り替え: 3か月以上継続していて、今後も使うなら年額で1〜2割安くなることが多い
  • 重複ツールの統合: 部署ごとに別のチャット・ストレージを契約している場合、1つにまとめる
  • 交渉: 複数年契約やユーザー数の追加を条件に、単価の引き下げを相談する(営業担当がいるサービス)

よくある質問

Q. 台帳はGoogleスプレッドシートとExcelのどちらがいいですか? 複数人で同時に編集し、通知を出したいならGoogleスプレッドシートが向いています。Excelでも運用できますが、共有フォルダ上のファイルを各自が上書きしないルールが必要です。

Q. 解約期限を過ぎてしまった場合は? 自動更新後でも、次の更新日までに解約を申し出れば、その次の期間からは止まります。まず台帳の更新日を1期間分ずらし、解約期限を再計算してください。

Q. 部署ごとに台帳を分けてもいいですか? 分けると合計が見えなくなります。1つの台帳に「部署」列を持たせ、フィルタで部署別に見る形にしてください。

Q. 台帳はExcelとスプレッドシート、どちらがいいですか 複数人で同時に更新するなら、共有と変更履歴が残るスプレッドシートが向きます。経理担当1人で管理するならExcelでも問題ありません。どちらの場合も、ファイルの保存場所と編集権限を決め、個人のPCに置かないことが条件です。

Q. 個人カードで立て替えているサブスクが把握できません 経費精算のデータから「毎月同じ金額・同じ加盟店」の支払いを抽出すると、立替のサブスクが見つかります。見つけたものは台帳に登録し、次回の更新時に法人カードへ切り替えます。

Q. 解約したのに請求が続いています アプリストア経由の契約、複数アカウントの契約、無料トライアルからの自動移行のいずれかが多い原因です。カード明細の加盟店名から契約経路を特定し、それぞれで解約してください。解約完了のメールは台帳に添付して保管します。

Q. 台帳の作成を外部に頼めますか 経理のアウトソーシングやオンラインアシスタントに、カード明細からの抽出と台帳の初期作成を依頼する方法があります。ただし「解約するかどうか」の判断は社内で行う必要があり、台帳の維持は月次の締めに組み込むのが確実です。

Q. 台帳の見直しは誰が最終決定しますか 継続・解約の判断は、そのツールの利用部署ではなく、費用を管理する責任者(経営者・管理部門長)が行います。利用部署は「なくなると困る理由」を出し、責任者が費用と照らして決める、という分担にすると、判断が滞りません。

Q. 部署ごとに勝手に契約されるのを防ぐには 「SaaSの契約は台帳登録と管理部門の承認が条件」と社内規程に1行入れ、法人カードの利用明細を管理部門が月次で確認する仕組みにします。個人カードの立替は、サブスクに限って原則禁止にすると、把握できない契約が減ります。

Q. 無料プランのツールも台帳に載せますか 載せます。無料プランは費用がかからなくても、会社のデータ(顧客情報・ファイル)が外部サービスに置かれている点は有料と同じで、担当者の退職時にアカウントが放置されると情報管理上のリスクになります。費用0円でも「解約期限」の代わりに「担当者」と「保存しているデータ」を記録してください。

契約中のSaaSの月額を並べて見直すには、無料のバックオフィスSaaSの月額コスト試算ツールも使えます(入力は送信・保存されません)。

関連記事

関連記事

【利益相反開示】本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。当編集部は独立した立場で製品を検証しており、掲載順位・評価は広告主の意向によって左右されません。詳細は編集方針をご確認ください。