この記事の結論
- 新卒採用動画で失敗する最大の原因は「何を撮るか」を決めずに撮影を始めることです。学生が見ているのは動画のクオリティではなく、雰囲気・人柄・1日の流れが分かるかどうかです
- 撮る内容は予算別に型があります。スマホ撮影のみでも、8つのカットを押さえれば新卒向けとして十分機能します。予算が上がるほど、拠点数・演出・ナレーションの完成度が上がる、という違いです
- 演出過多・条件の列挙だけ・原稿読みだけのインタビューはNGです。等身大の姿を、短くても複数本に分けて見せるほうが、1本の大作より読まれやすくなります
「新卒採用動画を作ろう」と決めたあと、多くの担当者が最初に迷うのは「結局、何を撮ればいいのか」です。制作会社に依頼する場合でも、自社で撮る場合でも、撮る内容の方針が決まっていないと、企画も撮影も進みません。方針が曖昧なまま撮影日を迎えると、当日その場で内容を決めることになり、結果的に「なんとなく会社の様子を撮っただけ」の動画になりがちです。会社選びそのものの基準は採用動画の制作を依頼する会社の選び方で整理していますが、この記事では一歩手前の「何を撮るべきか」を、予算別・カット別に整理します。
撮影前に決めておく3つのこと
カメラを用意する前に、社内で次の3つを決めておくと、撮影当日の進行がスムーズになります。
| 決めておくこと | なぜ必要か |
|---|---|
| 動画の目的(認知/母集団の質/内定承諾率のどれか) | 目的が違うと、撮るべきカットの優先順位も変わる。決めないまま撮影を始めると、企画が途中でぶれる |
| 出演者の同意確認と、退職・異動時の扱い | 後から「動画を消してほしい」と言われた場合の対応方針を先に決めておくと、トラブルを防げる |
| 台本・質問リストを誰が作るか | 担当者が当日その場で質問を考えると、インタビューの質にばらつきが出やすい |
特に2つ目は見落とされがちですが、新卒採用動画は数年単位で使われることが多いコンテンツです。出演した社員が退職した場合にどう対応するかを、撮影前に本人と合意しておくと、後々の判断に迷いません。
学生は新卒採用動画の何を見ているか
採用担当者が見せたいのは「かっこいい会社」の姿ですが、学生が動画から実際に確認しているのは、もっと具体的な点です。
| 見ている点 | 動画で確認していること |
|---|---|
| 雰囲気 | 職場が暗い・怖い印象がないか。社員同士が話しているか |
| 先輩の人柄 | 入社1〜3年目の社員が、どんな表情・言葉で話しているか |
| 1日の流れ | 朝から夕方まで、実際にどう過ごすのか。求人票の文字だけでは分からない部分 |
| 成長環境 | 未経験からどう教えてもらえるか、研修や資格取得の支援があるか |
| 条件面の裏付け | 求人票に書かれた休日・残業の実態が、映像からも矛盾なく見えるか |
この5点のどれにも答えていない動画は、「見た目は良いが何も分からない」という印象になり、結局求人票を読み直す作業を学生に強いることになります。撮影前に、この5点のうちどれを重点的に見せるかを決めておくと、企画がぶれません。すべてを均等に扱おうとすると尺が長くなりすぎるため、自社の課題(応募が少ない、内定辞退が多い等)に応じて、優先する2〜3点を絞ることをお勧めします。
予算別 撮る内容の型
予算によって、撮れる内容と作り込みの深さは変わりますが、「学生が見ている5点」を押さえる方針は、どの予算でも共通です。
| 予算感 | 撮影方法 | 撮る内容の目安 |
|---|---|---|
| スマホ撮影・自社で | 担当者が業務用スマホで撮影、簡易編集アプリで編集 | 社員インタビュー1〜2本+1日の流れの写真スライド。凝った演出は避け、素の雰囲気を短く見せる |
| プロに一部依頼(半日撮影) | カメラマンに半日〜1日だけ依頼し、編集も含めて外注 | インタビュー2〜3本+オフィス・現場カット+簡単なナレーション |
| フル制作依頼 | 企画から編集まで一括依頼。複数拠点・複数職種に対応 | 複数職種のインタビュー+1日の流れの再現撮影+社長メッセージ+成長ストーリー |
予算が少ないからといって「学生に響かない動画」になるわけではありません。スマホ撮影でも、等身大の言葉で話す先輩の姿は、演出された高画質映像より信頼されることがあります。逆に、予算があっても撮る内容の方針が曖昧だと、高額な動画でも「結局何が伝わったか分からない」という結果になります。
撮っておくべき8つのカット
予算に関わらず、次の8つのカットを押さえておくと、新卒採用動画として機能しやすくなります。
| # | カット | 撮り方の一言 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | 社員インタビュー | 入社1〜3年目を中心に、複数の職種から | 学生に近い立場の言葉で語ってもらう |
| 2 | 1日の流れ | 朝の出社から退社まで、時間帯ごとに区切って撮影 | 働き方の実態を見せる |
| 3 | オフィス・現場全景 | 入口からの1枚、作業スペースの様子 | 面接前の不安を減らす |
| 4 | 先輩後輩の会話 | 台本なしの自然な会話(顔出しの同意は事前に) | 教育・関係性のリアルさ |
| 5 | 社長・経営層の一言 | 会社の方向性を短く、堅くなりすぎない言葉で | 会社の姿勢・将来性 |
| 6 | 入社後の成長ストーリー | 入社数年目の社員が、入社時と今の違いを話す | 将来の自分を想像しやすくする |
| 7 | 福利厚生が伝わる場面 | 休憩室・社内制度の利用シーン | 働きやすさの裏付け |
| 8 | 会社の数字紹介 | 創業年数・従業員数・平均年齢など事実の数字 | 安定感・規模のイメージ |
すべてを1本の動画に収める必要はありません。8つを2〜3本の短い動画に分け、SNSごとに出し分ける方法も有効です。1本に情報を詰め込みすぎると、どの場面も印象に残らない動画になりがちです。優先順位をつけるなら、1(社員インタビュー)と2(1日の流れ)を先に撮り、残りは反応を見ながら追加していく進め方が無理なく続けられます。
スマホ撮影でも失敗しない4つの基本
プロに依頼しない場合でも、次の4点を押さえるだけで、見やすさは大きく変わります。
- 明るさを確保する: 逆光を避け、顔に光が当たる位置で撮影する。室内なら照明を1つ追加するだけでも効果がある
- 手ブレを防ぐ: 三脚やスマホ用スタンドを使う。手持ちで撮る場合は、歩きながらの撮影を避ける
- 音声を別に確保する: スマホ内蔵マイクだけでは声が聞き取りにくくなりやすい。外部マイクやワイヤレスマイクを使うと、インタビューの質が大きく上がる
- 用途に合わせて縦横を分けて撮る: 説明会用は横向き、SNS用は縦向きで撮り直すか、撮影後に構図を意識してトリミングする
凝った機材をそろえる必要はありません。この4点だけでも、「学生が最後まで見られる動画」との差が大きく出ます。逆に、この4点を押さえずに撮影すると、内容は良くても「見づらい」という理由だけで最後まで視聴されず、伝えたい情報が届かなくなってしまいます。
インタビューで聞くべき質問リスト
社員インタビューを台本なしで自然に進めるために、次のような質問を事前に用意しておきます。
- 「入社を決めた理由は何でしたか」
- 「入社前と入社後で、イメージが変わった点はありますか」
- 「今の仕事で、大変だったこと・乗り越えたことは何ですか」
- 「1日の中で、一番好きな時間はいつですか」
- 「これから入社する人に、伝えたいことはありますか」
質問を渡す際は、答えを台本化させないことが重要です。「うまく話せなくても大丈夫」と伝え、多少の言い直しや沈黙もそのまま使うほうが、学生には自然な言葉として伝わります。事前に質問リストだけを渡し、当日はカメラの前で初めて答えてもらう形にすると、練習しすぎた不自然さを避けられます。
拠点・職種が複数ある場合の進め方
複数の拠点や職種を持つ会社では、すべてを1本の動画に収めようとすると、どの拠点・職種も浅い紹介になってしまいます。次のような進め方で、無理なく展開できます。
- 初年度は1〜2拠点・職種に絞る: 応募が最も欲しい拠点、または学生からの認知が低い職種を優先する
- 共通で使えるカットと、拠点固有のカットを分ける: 社長メッセージや会社の数字紹介は共通で使い、1日の流れや現場カットは拠点ごとに撮る
- 翌年以降、残りの拠点・職種を追加する: 一度に全部を撮るより、毎年少しずつ増やすほうが、撮影の負担も分散できる
「全拠点を平等に扱わないと不公平では」と感じる担当者もいますが、学生から見れば、まず知りたいのは自分が応募する拠点・職種の情報です。全部を薄く見せるより、応募が多い部分を厚く見せるほうが、結果的に学生の意思決定に役立ち、社内の撮影負担も無理なく分散できます。
NG例 — 撮ってはいけない・避けるべき内容
- 演出過剰な構成: ドラマ風の演出やナレーションを多用すると、実態との差を感じさせやすい
- 条件面だけを延々と列挙する: 給与・休日は求人票に任せ、動画では場面で伝える
- 社員が原稿を読むだけのインタビュー: 用意された言葉を読む姿は、学生にすぐ伝わってしまう
- 複数拠点があるのに1拠点だけを撮る: 配属先によって印象が大きく変わる場合、誤解を招く
- 将来を過度に保証する表現: 「必ず成長できる」「絶対に活躍できる」等の断定的な表現は、実態と異なった場合にミスマッチや早期離職の原因になりやすいため避け、「多くの場合」「〜という声が多い」等、一般的な傾向として伝える表現にとどめる
- 本人の同意のない出演・使用: 退職後や異動後の扱いも含め、事前に書面で確認しておく
動画とSNS投稿、どう使い分けるか
新卒採用動画を1本作ったら終わりにせず、日常のSNS発信と組み合わせることで効果が続きます。動画は「まとまった情報を1度に伝える」役割、SNSの日常投稿は「会社が今も動いていることを継続的に伝える」役割と考えると、使い分けがしやすくなります。製造業向けの日常発信のネタは製造業の若手採用、SNSで発信するネタ30個に30個まとめています。動画をどの媒体にどう出し分けるかは媒体別ショート動画の使い分けを参照してください。
撮影後の公開先・使い回し方
| 公開先 | 使い方 |
|---|---|
| 採用サイト | トップページ、または職種別ページに埋め込む |
| 説明会・会社説明 | 冒頭で流し、その後の質疑応答の時間を確保する |
| SNS(切り出し版) | 8つのカットのうち1〜2個を15〜30秒に短縮して投稿 |
| 面接前の候補者への送付 | 「面接前にご覧ください」と個別に送付し、当日の質問の質を上げる |
撮影して終わりにせず、この4つの公開先に展開してはじめて、撮影にかけた時間と費用が回収されます。特に「面接前の候補者への送付」は見落とされやすい使い方ですが、当日の質疑応答の質が上がり、双方のミスマッチを減らす効果が期待できます。
自社で撮る/プロに頼むか迷ったら
「まずはスマホ撮影で試して、反応が良ければプロに依頼する」という順番でも問題ありません。むしろ、何を撮るべきかの方針が定まっていない段階で高額な制作を依頼すると、方針のブレがそのまま高いコストに反映されてしまいます。プロに依頼する場合の会社選びの軸や費用相場は採用動画の制作を依頼する会社の選び方にまとめています。撮影・企画の負担そのものを減らしたい場合は、AIキャラクターが日常の発信の下書きを作り、人は確認と承認だけを行うAI社員という選択肢もあります。新卒採用動画のような節目のコンテンツは別途企画し、日常の発信はAI社員に任せるという分担も検討できます。まずは無料個別相談で、御社の状況(予算感・撮影できる社員の人数・希望する公開時期)をお伝えいただければ、動画とSNS発信をどう組み合わせるべきかも含めてご相談いただけます。
よくある質問
Q. スマホ撮影でも学生に響きますか。
画質の高さより、話している内容と表情が自然かどうかのほうが重視されます。演出を抑えたスマホ撮影のほうが、むしろ「作り込まれていない、リアルな会社」として好意的に受け取られることもあります。
Q. 何人の社員に出てもらうべきですか。
できれば最低2〜3名、入社年数や職種、出身地の異なる社員に出てもらうと、学生が「自分に近い立場の人」を見つけやすくなります。1名だけだと、その社員個人の印象がそのまま会社全体の印象として受け取られてしまう点に注意してください。
Q. 尺(長さ)はどれくらいが適切ですか。
説明会で使うまとめ動画は3〜5分程度、SNSに切り出す場合は15〜60秒程度が目安とされています。1本に情報を詰め込みすぎず、用途別に長さを分けたほうが、それぞれの場面で最後まで見てもらえます。
Q. 台本通りに話してもらうべきですか。
一言一句の台本ではなく、質問リストと話す順番だけを事前に共有する形をお勧めします。台本を丸読みすると、学生には「演出されている」と伝わりやすく、逆に信頼を下げることがあります。
Q. 一度作った動画はいつまで使えますか。
出演した社員が在籍している間、かつオフィス・制度が大きく変わらない間は使い続けられます。目安として1〜2年ごとに、内容が実態と食い違っていないかを確認し、必要な部分だけ撮り直す運用が現実的です。全部を撮り直す必要はなく、8つのカットのうち古くなった部分だけを差し替える意識で十分です。
Q. 複数の職種があります。全部撮る必要がありますか。
予算と時間が許す範囲で構いません。すべてを撮れない場合は、応募が最も欲しい職種、または学生からの認知が最も低い職種を優先してください。残りは翌年以降に追加する前提で計画すると、初年度の負担を抑えられます。
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